今回は箸休めみたいな内容です。
昭和って『おいちゃん』がいっぱいいましたよね。ここで言うおいちゃんは本当に貫禄のある着飾らない男性のことです。
でも子供の時ってこういう『おいちゃん』にまた会いたくなるんですよ。
僕は小学3年生の時、町内のソフトボール大会に参加したんですが、それまではグローブもボールも持ったことがありませんでした。
約2ヶ月前くらいから練習が始まるんですが、子供会担当のおばちゃんから小学校の体育館に集まるよう言われて、その後運動場に行かされて学校にあるボロボロのグローブを着けさせられ、いきなり練習開始(涙)
少年ソフトボール監督のおいちゃんのノックは容赦なくロケット弾のように次々とボールが頭上に降り注いでくるので逃げまくりました。
それに見かねたおいちゃん、全速力で僕のところへ走ってきて、
「お前、ソフトボールやったことないんか?」
「はい」
そこからやく1分、グローブの構え方、目付けなどを教えてくれました。
「おい!もう一回取ってみろ‼️」
次々にノックのボールが降り注いできます。でも今度は全部取ることができました。
「次は直球いくぞ!」
ものすごい勢いのボールが僕の胸へ飛んできましたが、それもしっかりとキャッチできました。
「よっしゃ、それでいい。楽しかろうが」
わずか1分の指導でここまでできるようにしてくれたおいちゃん、本当にすごいと思いました。
僕は母子家庭なので父親や男性の接し方、愛情は知りません。ですがこの時初めて男性の優しさを体験しました。
朝練、夕練と1日2回の練習が続きました。とても厳しい練習でしたが、合間に見せてくれる本気のバッティングやピッチングはみんな釘付けでした。
でもおいちゃん、言葉は荒いけど決して怒らないんです。要点を説明したら即練習、とにかくこの繰り返しでしたが、大会を迎える2週間前には全て完璧に仕上がっていました。
「教えることはおいちゃん全て教えた。あとはしっかりと自分の力を発揮してこい」
大会当日、おいちゃんはそう言うと監督席に座り試合を見守りました。
結果は三回戦で敗退しましたが、少年ソフトボールチームに所属している子供の多い町内ともまともに闘うことができました。
試合後、チームのみんなは自信にあふれた顔になっていました。そして絆もできました。
この一度きりの経験が僕にとっては今も最高の宝です。
もうひとつ。小学校の夏休み、1日限定でじいちゃんが通っていた年長者学習施設で年長者と孫の集いというイベントがありました。
ここで木工品制作の授業がありましたが、その時の先生が昭和では定番の昔気質の木工職人。口調が荒く子供でも容赦のないおいちゃんでした。
「お前ら、やる気が無いなら帰れ!」
工作そっちのけで遊んでいる子供に一喝、
「子供に作らせないかんのにあんたが作ってやってどうするんか」
引率してきたじいちゃんに一喝。
しかし、僕のじいちゃんは大変不器用なので僕は最初から悪戦苦闘しながら授業の時間が過ぎてやっと完成しましたが、そのおいちゃん怒らずに
「おい、もういっぺん作ってみな」
新しい材料をくれると今度は手取り足取りで教えてくれました。
「これを見本にするといい。家に帰ったらもういっぺん作ってみるといいぞ」
そう言うと自宅用の材料を袋に詰めてくれました。
「俺はあんたらのことをずっと見てたんだけどな、じいちゃんが手を貸さずに孫に作らせていたその姿勢が好きなんよ。今まで教えに行ってたとこ、ここでもじいちゃんがみんな作ってやるから教えたくないんよ。でも今日はいい日やった。」
おいちゃんはニコッと笑い、夏の夕焼けもプラスしてとてもカッコよく見えました。
こんな感じで頑固で着飾らないストレートなおいちゃん、会いたくなるおいちゃん、子供に人気のあるおいちゃんがいっぱいいた楽しい時代でした。
今はこんなおいちゃんが少なくなってきてますね。日本の元気が無くなってきているような気がします。若者のご機嫌取りではなく、若者をきちんと育てる、嫌われてもありのままに振る舞えるおいちゃん、僕もそういう年の重ね方をしたいです。
山伏のお寺&整体院
本山派修験宗聖護院門跡末寺 菩提山 瑞光院の住職 瀬口一幢(せぐちいちどう)と申します。 バランス整体アトリエ椿の院長もやっております。 よろしくお願い致します。
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